Original

人の破り捨てたる文を継ぎて見るに、同じ続きをあまたくだり見続けたる。
いかならむと思う夢を見て、恐ろしと胸つぶるるに、こともあらず合はせなしたる、いとうれし。

『枕草子ーうれしきもの』清少納言

名前について

Beautiful photomechanical prints of White Irises (1887-1897) by Ogawa Kazumasa. Original from The Rijksmuseum.
萱乃

萱草(カンゾウ)から「萱」を取った
萱草はワスレグサという別名もある
ユリに似た花だが、ユリとは全く無関係の花
閖柯と瓜二つなのに同じにはなり得ない、の意味


夏の季語で万葉集にもあるくらい古い花
夏目漱石「生れ代るも物憂からましわすれ草」
「生まれ変わっても貴方のことを思ってつらいのだろう」
和歌では、悲しいことを萱草に託して忘れる、もしくは萱草を見て思い出されるような使い方
強い悲しみに対する諦めの意味がある


千萱(チガヤ)という植物も性質が本人の性格っぽい
チガヤはススキに似たどこにでも生える雑草
植物の性質が本人の目立たない強さ・しぶとさに合ってる


「乃」は完全に字面で取った
「萱」と「乃」で画数の差が大きいため、書くときにバランスが取りにくい
しかし墨で遊びやすく、面白い字面
とても書きにくい(私個人の感想)

閖柯

「閖」という漢字は日本で作られた漢字(国字)
地名の表記に使う(閖上「ゆりあげ」と読む)
しかし、閖柯という名前はその地に関係ない
門の中に水が見えたのが漢字の由来らしい
情景から新たに作り出された漢字だから好き
美しい人工物的な異質さが本人の性格に合ってる


ユリという音が花の「百合」と「揺」のダブルミーニングになってる(漢字の由来ではない)


「柯」という漢字は枝の意味を持つ
字面で使ったから、名前としての意味はない
名前が飾り映えしない字面で安定感がある
カという音で人名に使われる漢字に多い「華」「花」「香」「佳」などは、名前全体が濃くなり過ぎるから嫌だった
閖柯と筆で書いたときにあんまり面白くない
かなり書きやすい(私個人の意見)

Beautiful photomechanical prints of Cherry Blossom (1887-1897) by Ogawa Kazumasa. Original from The Rijksmuseum.